雑誌で変わる,
法学学習。

 法学教室2019年12月号第2特集「テキスト学習の進め方」では,若手弁護士3名が,学生時代「教科書」「判例学習用教材」「六法」などのテキストをどのように活用しながら夢を叶えていったのかを紹介しています。
 ここでは, 教科書とはちょっと違う「法律雑誌」をテーマに,その3名の先生方に学生時代,日々の学習や司法試験受験の際にどのように活用していたか,現在はどのように使っているか,ざっくばらんにお話いただきました。

  • 松村 彩(まつむら・あや)

    2016年弁護士登録。
    ノースブルー総合法律事務所所属。

  • 辻野真央(つじの・まお)

    2016年弁護士登録。
    長島・大野・常松法律事務所所属。

  • 土田悠太(つちだ・ゆうた)

    2016年弁護士登録。
    東京八丁堀法律事務所所属。

「法律雑誌」で日々の学習が変わる

土田悠太

TSUCHIDA Yuta

(編集部)みなさんが,初めて法律雑誌に触れたきっかけは何だったのでしょうか?

土田 私は,大学に入学して初めての定期試験が終わって,「ああ,法学部の試験ってこんな感じなんだ」というのが分かりました。その後,2回目の試験以降からは図書館で勉強するようになりました。そこで,雑誌コーナーに置いてあった法律雑誌を手に取ったのが初めてだったと思います。
そのときに見たのが,(バックナンバーの)4月号か5月号かで,「法律の勉強の仕方」というような特集が組まれていて,そのとき,まさに勉強の仕方が分からなかった私は,興味を惹かれました。

辻野 最初の試験から手応えは感じていたの?

土田 手応えはあったけど,結果が伴わず…という感じで(笑)。
そこで目にした雑誌を読んで,法律の勉強をするときは「ただ基本書を読んでいるだけではダメ」「基本書を読んだ上で,判例の学習をして…」など,どのように勉強すればよいかということを学びました。当時,基本書もあまり読んでいなかったんですけど,そういうのを読んで,まずは基本書をしっかり読まなきゃいけない,とか学習の筋道みたいなことを理解することができました。それからは,当たり前のことかもしれませんが,講義には毎回,基本書を読んでから臨むようになりました。

辻野 私は,大学3年次にロースクール入試に向けて本格的に受験勉強を始めた頃に,雑誌の特集タイトルに惹かれて手に取ったのがきっかけです。法律雑誌の特集は,ネーミングがキャッチーなものも多くて,「○○科目の基本」,「○○法の再確認」,「○○法の落とし穴」のようなタイトルを見て,「私も落とし穴に嵌っているかも…」と思い,つい手に取ってしまうこともありました。

土田 「落とし穴」とか書いてあると,自分も嵌っているんじゃないかって不安になるよね。

辻野 そうそう。基本が身に付いていないかもしれない,と不安に感じている頃に,そういう特集タイトルを見ると,これは学んだほうがいいな,と思って読んでいました。本当に,ネーミングセンスには脱帽しています(笑)。

松村 私は,たぶん学部2年生くらいまでは法律雑誌が存在していることも知らなかったと思います。基本書とか六法とか判例百選とかは買っていたけど。図書館で勉強しようと思って行ったときに,表紙が見えるかたちで法律雑誌が置いてあって,そのときは私も「民法の躓きどころ」のような特集に惹かれて手に取りました。開いてみるとすごい読みやすくて分かりやすい言葉で書かれているんだけど,ちゃんとした大学の先生による解説があって…,こういうものがあるんだなっていうのが分かってから,使い始めました。
しかも,法律雑誌の中でもいろんな種類があることに気がつきました。コラム的な記事が多いものから判例がひたすら載っているものもあって。そういういろいろなものがある中で,当時の自分が必要としていた,例えば「民法の基本」みたいな特集記事は重宝していました。

辻野 有名な大学の先生が書いている記事だと,信頼できるよね。基本書の脚注にも引用されているような記事が載っていたりするのもありましたし。執筆している先生が自分の見知った方だったり,よくお名前を聞く方だったりすると,こういう人が書いている解説だったら安心して読めるな,と信頼感がありました。

土田 「たしかに,自分が履修していた講義の先生が書いている記事とかは見ていました。授業では何を言っているのかあまり分からなかったところが,その記事を繰り返し読んで理解できるようになったり。

松村 そうそう,自分の出ている授業の先生の記事はつい見ちゃうよね。普段授業をしている先生の記事がこの雑誌に載っているというのが分かると,他の箇所にも自分の通っている大学の先生はいないかなと探すこともありました。

辻野真央

TSUJINO Mao

(編集部)法律雑誌に対して,読む前と後で印象は変わりましたか?

辻野 基本書・判例集・問題集などいろいろな教材がある中で,法律雑誌は少しとっつきにくさが初めはありました。大学の先生や実務家とかが読むものかなと思っていましたし。でも,実際読んでみると,簡単な言葉で書かれているし,ユニークな文章で書かれているのもあり,意外と取り組みやすい,読みやすいものなんだと感じました。

土田 私も初めはとっつきにくさを感じていましたが、実際に読んでみると、思った以上に読みやすかったです。基本書は読み始めるとキリがないというか,どこで終わるんだろうって(笑)。読み続けるのが苦しく感じることもあるのですが,雑誌はひとつひとつの記事が短くまとまっているから,辛くなってきた頃に読み終わる。いい塩梅で読み切れるから取り組みやすかったです。

松村 読む前は法律雑誌には難しい内容ばかりが書かれている印象でしたが、実際に読むと、記事の中に図も掲載されていたりして分かりやすく書かれているものが多かったと思います。もちろん基本書にも図が多く使われているものはあるけど,雑誌だと分かりやすい言葉を使ってくれながら,図もあって,視覚的にも読みやすいと感じていました。

土田 確かにそうかも。

辻野 基本書だと「判例とかの事実関係はこうです」と書いてあっても,分量が短く簡潔に終わってしまうことがある。もちろん,そうやって簡潔にまとめてあることに魅力もあるけど,雑誌だと,判例解説でも,ある程度長く事案も解説してくれるから,こういう事実関係のもとでこういう規範が導かれているんだっていうのがより理解できました。

松村 彩

MATSUMURA Aya

(編集部)法律雑誌と出会ってから,その後どのような場面で使っていましたか?

松村 学部の定期試験前に、基本書を読んでも,なんとなくは分かるんだけどしっかりは分かっていない部分があって,その範囲についてピンポイントで雑誌の特集が組まれていたりすると,手に取っていました。ひとつの論点について詳しく書かれているから,そこでなるほどなって理解できる。そうやってから,基本書に戻って読み返すとさらに理解が深まっていきました。

土田 私も,主に定期試験前に読んでいました。学部3年生のときにロースクールへ進学しようと決めた後は,図書館で勉強することも多く,受験勉強のためにいろいろな法律雑誌を手に取っていました。
基本書や問題集を読んでも分からないところがあると,その範囲について書かれている記事を探して読んでいました。

辻野 試験前に使うことは多かったよね。学習を進めていく中で,教科書は読んだ,過去問・問題集もやった,だけどちゃんと知識の整理がついているか不安,というときに,さらにちょっと重ねて苦手分野を復習するときに使っていました。図書館に置いてあると手軽に取りやすいから,そこで苦手分野を探して,ここにこんな特集がある,とか,ここに問題演習があるって発見すると,興味があるところは必死に読んでいました。

松村 書店には直近の号しか置いていないけど,図書館には過去の号も置いてあるから,あっこれはもう一度読みたいな,っていうのをすぐに使うことができました。

土田 とても分かりやすい記事を見つけたときは,勉強用のノートにまとめて,後でいつでも見返せるようにしていましたね。

辻野 学生の頃につまずくところって,けっこう共通していて,刑法でいうと「共謀」って本当に分かっている?とか,民法でいうと「代理」ってちゃんと整理しきれている?とか。学生のつまずく共通のところは,先生も把握しているから,こういう特集があるよって薦めてくれて,それを読んでいました。

土田 先生も,授業では基本書以上の内容をたくさん解説してくれるのですが,中々そのときだけでは消化しきれないこともありました。そういうときに雑誌の記事などでじっくり読んでみると,なるほどそういうことを言っていたのかと腑に落ちることもありました。

(2019年10月25日収録)

雑誌以外のテキスト学習について,詳しく知りたい人は…

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法学教室 2019年12月号(No.471)

特集2 「テキスト学習の進め方」

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